JAS有機農産物にご用心!

2009年12月7日 朝日新聞
2009年12月7日 朝日新聞

畜産農家には頭の痛い話かもしれないが、反論を恐れずに言葉にしてみたい。

 

皆さんは、日本農林規格(JAS)をご存知だろうか?

簡単に言うと、工業製品などに見られるJIS規格の農業版のようなものである。安全な商品、安心して食べる事のできる食べ物の品質維持などを目的として、公的な保証を与える機関といったところだろうか。JAS法という法律がある。

 

このJAS法の中に、有機農産物を規定する項がある。

有機農産物とはつまり、有機的な栽培方法によって作られた農産物である。有機農産物は、生産者や販売者が勝手に表示することができない。「オーガニック、有機」などの表示をするためには、第三者機関である認証機関の検査等を受けて、「認証」を受けなければならない。(これまでずーーっと有機的な栽培を続けてきた方々からは、こんな法律は受け入れられないという反論が根強い。)

 

認証されるのは、種蒔きまたは植付け前2年以上、禁止農薬や化学肥料の使用をしていない「圃場」で、栽培中の使用ももちろん、遺伝子組み換え技術も禁止されている。

 

スーパーに並んでいる食品の中にはたまに見受けられる緑色のJASマークがそれにあたる。下に認証機関名が記されている。

 

認証機関は、日本中に多数存在し、使用農薬のチェックや圃場での農薬使用履歴などの把握は、各認証機関の裁量にある程度、委ねられている。

 

詳細は知らないが、世界中に、例えばフランスのABマークなど、同様の規格が存在する。先日、日本のJAS有機認証が、EUでも表示可能というお墨付きをいただいたらしい。

 

オーガニック食品の流通とbio(自然のまま食べる事)は世界的な潮流のひとつだ。一見、すばらしい商品が産み出されるような仕組みに見える。しかし、気になっているのは畜産堆肥の使用に制限が無い事や、種子の検査にザルな点である。


産業廃棄物として行き場のない畜産堆肥を農産物に還元する。それ自体はとても重要な連鎖だと思う。しかし、何を食べているのかよくわからない我々現代人の人糞で考えれば分かるように、海外からの輸入飼料約80%と、輸入飼料に頼る現代の牛豚の糞尿を畑に投入するというのは、危険な行為ではないか?という疑問は持たなかったのか。あるいは、わかっていたが、どうしようもないしがらみがあるのか。


以前から指摘のあった事だが、JAS有機農産物は真に安全な農産物ではない。奇跡のリンゴの木村さんの本に書いてあったが、有機栽培の食品の腐れが最も早かったという実験結果は、恐らくこの辺りの事情ではなかろうか。安全だと思っていた物が、実は、不安全側に重心を傾けた事のショックは、ことのほか大きい。